日本住宅性能検査協会 【建物検査研究会】

一級建築士を中心とした、建築系専門資格者によって構成される研究会です。営利企業とは異なるNPOとしての客観的・公正な支点から、適切な建物検査のあり方を研究しています。第三者として厳しい判断やアドバイスを行い、消費者が安心して住宅を購入できる環境作りを目指します。 

ログハウスのほか、輸入住宅等の欠陥住宅事例

〔千葉地裁平成11年7月16日判決〕

【建物プロフィール】

平成3年購入のログハウス(丸太を組み合わせてつくった建物)

売買代金は1億2000万円(建物価格7354万2200円/土地価格4465万

7800円)

入居直後より複数箇所からの雨漏りが多発した。

【入手経路】

土地建物の売買契約

【相手方】

売主(業者)

尚、実際に建築した業者が補助参加

【法的構成】

 瑕疵担保(解除)、不法行為、債務不履行

【期間制限】

  瑕疵担保については、「訴訟外において契約の解除の解除による代金の返還請求または損害賠償請求したことの証拠」がないとして排斥。

【判決の結論】

  不法行為構成により請求を一部認容。

  請求額⇒1億5622万1559円

 認容額⇒1億0563万1850円

【認定された欠陥】

  雨漏りの原因として、木材選択の誤り、木材の耐腐食加工の不備、木材の組み立て方の誤り、等を主張している模様。その他、延焼防止機能を保つ外壁の不施工、土台とアンカーの施工不備、立地の不備等。 

【コメント】

ログハウスにつき欠陥を判断した珍しい事例。詳しい判示がないのが残念。

「引渡し後わずか8年でもはや人が住むにふさわし建物とは言えない状態」「個々の瑕疵を論ずるまでもなく、建物当初から本件土地の立地に適合しない欠陥住宅」と認定しているので、必ずしも双方の主張や詳細や、事実認定および判断過程は明らかになっていない。

ただ、判決文からは、相当ひどい雨漏りが、しかも複数箇所より進行(建物内テレビに水がかかり煙を上げる等)していたこと、および使用された木材の激しい腐食の進行が窺われる。

本件判決は、被告が住宅の建築・販売の専門業者であることを指摘して、販売する際には「その建物が設計、材料,工法からみて十分な耐久性を有すること、その土地の気候風土に適合することを確認したうえ販売する注意義務がある」と判示しているので、ログハウスのほかにたとえば輸入住宅等の欠陥住宅事例に応用できる余地がある。

用語説明

ログハウス

丸太を使った建築物を指すが、一般的に水平方向に井桁のように組み合わせて建てた建物を指す。スカンジナビアの伝統的な構法。ログハウスという言葉は和製英語であり、英語ではLog CabinまたはLog Homeと呼ぶ。 “ログ”とは丸太の意である。

丸太を組み合わせて壁を構成したもののほか、 角材(角ログ)を使用するもの、 丸太は柱や梁にのみ使用して壁には漆喰などを使用するものなどもログハウスとして扱われている。 日本古来の校倉造の正倉院あるいは長野県の農村で見受けられる伝統的な板倉「せいろう倉」は、断面が三角形や四角形の木材を組み上げて作られており、 これらもログハウスと見なせる。

ログハウスの特徴として、湿度の調整がとても優れており、また木の断熱性の高さから夏は涼しくて冬は温かいということが挙げられる。また、コンクリートなどに比べて感触が良く、木の温もりを感じることができるなどの特徴もある。

17~18世紀には北アメリカに伝搬し、西部開拓の象徴として広まった。日本には、1970年後期に導入されている。

ログハウスによく使われる樹種としては、ウェスタン・レッドシーダー、ダグラスファー、スプルース、フィンランドパインなどが代表的である。 近年原油価格の高騰に伴う輸送費の増大により、輸送マイレージの短い国産材の利用も拡大している。

 

 

<参考文献・資料>

判例タイムズ社

民事法研究会

日本建築学会「建築学用語辞典」

日弁連消費者問題対策委員会

ウィキペディア(Wikipedia)

 

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